冷静と情熱のあいだ・・・に


・初期臨床研修 指導医 中野弘康先生
・初期臨床研修医(1年目) 大槻拓矢先生
・聖マリアンナ医科大学5年生 石井大太さん

――大槻先生と石井さんから見た中野先生についてお聞かせください。
大槻 誰にでも情熱をもって接してくれる先生で、それは患者さんにも伝わります。私がひとりで回診に行ったときには辛そうだった患者さんが、中野先生の顔を見るだけで元気になるんです。はじめて触診を受ける患者さんのなかには「迫力があって、お医者さんというよりも、武道の達人という雰囲気ですね」と驚く人もいます。
中野 大槻先生は初期臨床研修の1年目。石井さんはまだ医大の5年生だけど、はじめて会ったのは聖マリアンナ医科大学から派遣された病棟実習でしたね。
石井 2017年の4月から病棟実習が始まって、そろそろ慣れてきたかな、というころに中野先生の下について、先生が取り組んでいる身体診察を体験しました。大学病院では検査を優先して問診や身体診察にあまり熱心ではない先生を見てきたなかで、中野先生のように時間をかけて、患者さんから病歴を聞いて、体に触れる医師がいることを知って、衝撃を受けたことを覚えています。これがきっかけとなって、実習が終わったあとも週に1~2回のペースでこの病院に通って、中野先生の教えを受けています。
大槻 たしかに大学病院では、身体診察よりも検査の結果を重く見る傾向があります。もちろん検査は必要ですが、患者さんは、検査の結果が同じでも一人ひとりが違う病歴を持っていますし、病状は常に変わります。患者さんにとって最適な診断を下すためには、問診と身体診察は外せない診察法だと考えています。
一方で、手でお腹を押した感触や、聴診器で聞いた心臓の音を診断に結び付けるノウハウは、誰かに学ばなければ身につけることはできません。中野先生は、まず自分が診断を下してから私の所見を聞き、間違いを指摘してくださいます。その場で答え合わせができるので、自分の感覚が磨かれているという手応えを感じることができます。
中野 同じ患者さんに毎日触れることで、改善にむかう過程で起こる感覚の変化を体で覚えることができます。このプロセスを繰り返すことで、診断の精度が上がります。初期臨床研修は医師としての基盤をつくる時期なので、時間を惜しまずに毎日ベッドサイドを訪れ、できるだけ多くの患者さんに触れてほしいと思いますね。

 

――研修医の大槻さんが、学生の石井さんに指導をすることもあるそうですね。
石井 中野先生にも後ろから見ていただいているのですが、隣について指導をしてくださるのは大槻先生です。中野先生がお忙しいときも、興味深い経過の患者さんが入院されると、声をかけていただいて診察に同行させてくださるなど、さまざまな形で指導を受けています。
大槻 当初は学生に何かを教えたり、面倒を見たりということに積極的ではありませんでした。自分で学ぶことしか考えられませんでしたが、人に教えて知識を共有することで、お互いの理解を深めていくことを考えられるようになりました。
中野先生から教わったことを、日を置いて石井さんに教えると、頭のなかで情報が整理されて、理解が深まります。また。医師は患者さんの引継ぎなどで病状を説明する機会も多いのですが、そのときに必要なプレゼンテーション力を磨くことができます。
自分が忘れてしまったことを石井さんが覚えているということもあって、自分ももっとがんばらなくてはいけない、というモチベーションにもなっています。
石井  大学病院では正規のカリキュラム以外で医局に来る機会は少ないのですが、多摩病院の皆さんは病棟研修が終わったあとも「どんどん来い」と言ってくださるので、もっと勉強したいという意欲がわいてきます。多摩病院でなければ、おふたりとのような関係は築けなかったと思います。
――初期臨床研修で学んでほしいポイントをお伺いします。
中野 できるだけ多種多様な患者さんを診ることです。多摩病院では総合診療センターがありますので、複数の専門科と連携を取りながら、さまざまな症例を診ることができます。
そして、問診と身体診察の技術を身につけてほしいと思います。とくにベッドサイドでの診察は重要です。ベッドサイドで患者さんと他愛のない話をしているなかから、いままで気づけなかった症状や病歴を知ることがありますし、初期研修のうちに経験を積んでおけば、のちにどのサブスペシャリティーを専攻しても、診断の基礎力として、かならず役に立ちます。
大槻 病棟に行くと、「診察してください」と言って自分からお腹を出す患者さんもいます。安心感を与えたり、信頼関係を築いたり、という効果もありますね。
石井 多摩病院には身体診察や問診を大切にする文化があって、さらに指導医の先生から具体的な技術を学ぶことができます。他の病院には少ない、得難い環境です。

 

――職場の雰囲気についてお聞かせください
石井 おふたりはもちろんですが、総合診療センターの皆さんや医局の他の先生がたも、皆さん学生の私に優しく接してくださいます。全体的にアットホームな雰囲気で、働きやすい職場です。
大槻 新しいことへのチャレンジを後押しする文化が根付いていると感じます。
2018年の1月に「レジデンピック」という研修医の1年生と2年生を対象としたコンテストが開催されて、私も参加しました。本選では他の参加者とチームを組んで、知識と、プレゼンテーション力、コミュニケーション力、後輩への指導力などを試される課題に取り組み、私のチームは準優勝に選ばれました。
今回が第一回ということで私は開催を知らなかったのですが、臨床研修センターから声をかけていただきました。研修医には、新しいことにチャレンジさせるという文化が、きっかけを与えてくれたのだと思います。
中野 臨床研修センターという部署が研修医や学生さんを受け入れる窓口になっているのですが、センター全体が病院外での自己研鑽に前向きで、私もセミナーや症例検討会が開かれるという情報を聞くと、若手医師にかならず参加を呼びかけています。
初期臨床研修は医師としての基盤をつくる時期なので、若いうちに外の世界を知ることは大切です。「こんなすごい先生がいるんだ」と刺激をうけますし、出会いを契機に学びを深めることができます。その機会を用意することは、指導医の重要な役割です。
――研修病院としての多摩病院の魅力をお聞かせください。
石井 幅広く、深い臨床経験を積むことができます。多摩病院での実習はいくつかの専門科をまわって見学するだけではなく、総合診療内科という、どの専門科に行けばよいのかわからない患者さんが最初に訪れる場所で、さまざまな症例の患者さんを診ることができました。また、二次救急のERでは、他の先生から患者さんを引き継ぐだけではなく、問診から身体診察、検査のプランまでを立案させてもらうことができました。貴重な臨床経験を得られる環境が、ここ多摩病院にはあります。
大槻 時間的に余裕のある先生が多いので、わからないことがあったときにはいつでも各科の先生に相談できます。一人ひとりの先生は教育への理解が深いとしても、過度に業務のボリュームが多ければ、研修医や学生の指導に時間を割くことはできません。教育への理解と、教えて見守る時間的な余裕が多摩病院にはあり、気兼ねなく教えを乞うことができます。
中野 好奇心が旺盛で、常に新しいものに取り組みたい、そんな学生さんに、ぜひ多摩病院で初期研修の2年間を過ごしてほしいと思います。当院は2006年に開院して、まだ12年という新しい病院です。アットホームな雰囲気やチャレンジ精神に溢れる文化が育まれてから、まだ日は浅いですが、この文化に共感できる若い先生の力で、多摩病院を盛り上げてほしいですね。