総合診療センターの強さ


・総合診療センター 副センター長 家 研也先生
・後期臨床研修医(2年目) 高畑 丞先生
・後期臨床研修医(1年目) 若林佳奈先生

――高畑さんと若林さんは、出身大学とつながりのない多摩病院を、研修病院に選ばれました。職場にはすぐになじめましたか?
高畑 私は人見知りをするので、多くの人たちと一緒に働くことに不安を感じていましたが、不安はすぐに解消されました。まずは総合診療内科の皆さんに「よく来てくれたね」という感じで受け入れていただき、さらに皆さんが、同じ出身大学の先生や、専門科の先生に引き合わせてくれました。
若林 私は見学に来たときに皆さんが優しく接してくださったので、人間関係については心配していませんでした。学閥のようなものもなく、最初から働きやすさを感じましたが、最初の半年間は「長野の田舎から出てきて何も知りませんが、よろしくお願いします」という感じで、猫をかぶっていました(笑)
 私が若林さんと初めて会ったのは、この病院に着任した2017年の6月ごろだったけど、そうは見えなかったよ?(笑)
高畑 6月だと、3カ月目ですね。
若林 本当ですか。周りの皆さんが優しいし、アットホームな雰囲気だったので、自分でも気づかないうちに地が出ていたのかもしれませんね。
当時から感じていたことですが、多摩病院には、違うと思ったことは、上位の先生にでも遠慮せずに「違うと思います」と言える雰囲気があります。私の意見が間違っていることのほうが多いのですが、先生方は皆さん、ただ否定されるのではなく、丁寧に根拠を説明してくださいます。
文献などから調べた情報でも、患者さんの置かれた状況によっては、実際の診療に生かせない場合もあるということですよね。さまざまな視点からの意見は参考になります。

 

――高畑先生と若林先生は、研修の終了後に進む方向性が違うそうですね。
高畑 家庭医として地域医療に取り組むために、診療の基礎力を学びなおしています。めざしているのはジェネラリストです。
私が卒業した自治医科大学では、「義務年限」と言って、卒業後の9年間は出身地に戻って、自治体が指定する医療機関で働くことを義務付けています。神奈川県内の病院と診療所で7年の勤務を終えたあと、残り2年間の勤務を兼ねて、多摩病院で後期臨床研修に入りました。
診療所では、医師は私ひとりで、2階に住みながら診療にあたっていました。一人ですべての責任を負うということで、不安やとまどいはありましたが、ここでの経験は、地域医療を担う家庭医という、自分が描いていた医療活動の理想にマッチしていました。
義務年限が明けたあとも、地域医療を続けようと決めましたが、本格的に地域医療に取り組む前に、指導医や専門医がいる病院で、家庭医としての基礎を学びなおしたいと考えて、多摩病院の「総合医・家庭医後期研修プログラム」を選びました。
若林 私の目標は皮膚科医のスペシャリストですが、皮膚科との関連が深い内科の基礎を学びたいと考えました。臨床研修が充実している病院を探したところ、多摩病院では総合診療内科の研修ができることを知りました。
見学に来て説明を聞くと、研修プログラムのほかにもさまざまな勉強会が開かれていて、より多くの知識を身につけることができると考えて、多摩病院を選びました。
  研修医のなかには、高畑先生のように家庭医をめざす人もいれば、若林先生のように、専門医をめざして、必要な知識を得るために総合医の経験を積みたいと考える人もいます。研修後の職場もさまざまですが、総合診療内科の経験を生かして、他科の医師やコ・メディカルスタッフとの間をつなぐ、横糸のような存在になってほしいと思っています。
若林 私がいま担当している病棟マネジメントは、まさにその役割を担っています。患者さんの多くは単独の疾病だけではなく、合併症を抱えています。私は総合診療科の医師という視点から、複数の専門科にまたがる治療プランをまとめて、退院までのスケジュールを管理しています。
 私は2015年から2年間、アメリカに留学しました。アメリカの病院にはホスピタリストと呼ばれる病棟マネジメントの専門職がありますね。
若林 総合診療内科では、このホスピタリストの経験を積むことができます。初期研修に選んだ総合病院では、すべてにおいて指導医の先生の指示を受けていましたが、多摩病院に来てからは、病気をアセスメントして、治療のプランを立てて、実行して、退院していただく、という一連のプロセスをすべて任せていただきました。とまどいもありましたが、経験を重ねることで自信がつき、いまでは自分ひとりでマネジメントができているという実感を持てるようになりました。
高畑 私は逆に、周囲の皆さんから力を借りることの大切さを知りました。
ある患者さんの退院について、ご家族の希望と私の判断との折り合いがつかず、説明を繰り返しても納得していただけないというケースがありました。
診療所での経験が通じなくて悩んでいるときに、指導医の先生から、退院後の方針を決めるカンファレンスを開いて専門医や看護師さん、介護職の皆さんに意見を求めてはどうかというアドバイスを受けました。
カンファレンスでは医師の視点からは気づけなかった意見を聞くことができて、それをもとにもう一度ご家族に説明すると、納得していただくことができました。
マネジメントには診療のスキルに長けているだけではなくて、患者さんやご家族の信頼を得るためのテクニックが必要なんですね。そのひとつが、さまざまな視点からの検証を経た、客観的な説明でした。多摩病院にはこのようなテクニックを教えてくれる指導医の先生がいて、さらに、実践できる環境があります。貴重な経験を積むことができました。

 

――総合診療センターの研修ならではメリットをお聞かせください。
若林 臨床研修では、総合診療内科の医師だけではなく、臓器別の専門医とチームを組んで診療にあたります。医局が一つしかないので専門科の症例を診ることもできますし、診療科同士の風通しがよく、わからないことがあえればすぐに専門医の意見を聞くことができます。
高畑 チームのメンバーは定期的に入れ替わるので、半年が過ぎたころには、ほとんどすべての先生と、相談し合える関係を築くことができます。
熱性痙攣など、小児科にしかない症例の診察は、臓器別の専門内科ではできない、貴重な経験でした。専門医の先生方はみな、研修医の質問に気さくに答えてくださるので、幅広い知識を得ることができます。研修が終わって家庭医になったときに、どんな患者さんが来ても落ち着いて対応できるという自信につながります。
若林 聖マリアンナ医科大学の持つリソースなど、医師の研究活動をバックアップする体制も整っています。幅広い専門科の臨床研修をこなすだけでも大変ですが、自分のキャパシティが許す限り、臨床研修を超えた知識を吸収できる環境があります。
 導医はみな、研修医の進路がジェネラリストかスペシャリストかという点にはこだわりを持たずに指導しています。総合診療内科と専門科の医師が一つの医局に集まっているので、医師の基礎としてジェネラルな能力を身につけながら、専門医としての知識にも触れたいというニーズに応えることができます。
私は研修医の皆さんに、優秀な医師であると同時に、優秀な医師を社会に送り出す教育者になってほしいと願っています。留学先のアメリカでは、後進の育成に役立つ自己学習のスキルを学んできました。いま、勉強会を通して、研修医のみなさんと一緒にこのスキルを高め合っています。ぜひ多摩病院の後期臨床研修に参加して、私たちと一緒に切磋琢磨していきましょう。