研修医のアウェー戦!!


池田真帆、市川翔太先生、清水ゆり子先生
初期臨床研修医(2年目)

――初期臨床研修では2年目に、2軒の医療機関でそれぞれ1カ月間の外部研修が行われます。1軒目は3名とも川崎市立川崎病院で、3次救急の救急外来を経験されました。2軒目の研修先をお聞かせください。
池田 鹿児島県の奄美大島にある、名瀬徳洲会病院です。病床数は270床で、多摩病院は376床なので、ひとまわり小さいというイメージです。
市川 時期は違いますが、私も同じ名瀬徳洲会病院です。
清水 私は多摩病院の近くにある、多摩ファミリークリニックでお世話になりました。地域の住民を対象に家庭医療を提供する診療所で、連携機関として、多摩病院を退院した患者さんのフォローアップをお願いしています。 ――ほかの医療機関と多摩病院の違いを感じた経験は?
池田 ほかの病院から来た研修生の話を聞いて、多摩病院のアットホームな雰囲気が、一般的には当たり前ではなかったということに気づかされました。
清水 多摩病院ではわからないことがあれば、すぐに指導医や専門科の先生に尋ねることができますが、研修先では躊躇することがありました。内線電話をかけるだけでも緊張しました。
市川  多摩病院では、周りの皆さんに優しく指導を受けながら研修生活を送っていますが、ほかの病院では、ライオンの子どもを谷底に落とすような放任主義で、早い時期から自立を促す研修もあるようです。
池田 良い点と悪い点の両面があると思います。短期的な成長は早いかもしれませんが、研修時に手厚い指導を受けずに、経験則のみを身につけた医師に、エビデンスにもとづいた治療ができるのかという疑問があります。多摩病院では、診断の結果だけではなく、根拠までていねいに教えていただけるので、はじめての症例を診るときに必要な応用力が身につきます。

 

――川崎病院での経験をお聞かせください。
市川 川崎病院は救急指定病院のなかで最も緊急性が高い、3次救急の指定病院です。受け入れる患者さんは重症度が高く、生死にかかわる状況で搬送されてくるケースは少なくありません。限られた時間のなかで考えをまとめ、効率的に動かなければならないという状況で診療を任せていただくという、貴重な経験を積むことができました。
清水 多摩病院の2次救急とは違って、3次救急では、全身管理という呼吸や循環機能の確認が優先されます。言い換えれば、常に患者さんが生きていることを確認しなければならないという状況で、2次救急以上の緊張感を持ちながら、診療にあたっていました。 ――名瀬徳洲会病院では、いわゆる離島での地域医療を経験された?
市川 高度な治療が必要になると、島から出て、鹿児島市の病院に移りますが、患者さんの多くは高齢者です、治療方針は島を離れて行う治療を望んでいるか、年齢を考慮してリスクに見合う効果が望めるか、という、患者さん一人ひとりが持つ背景を考えて決めます。多摩病院ではできない経験でした。
池田 多摩病院では、研修医のなかで初期と後期の間に一線が引かれていて、初期の研修医は常にほかの先生方から見守られています。一方で、名瀬徳洲会病院では、研修医もひとりの医師という考え方のもとで、初期も後期もなく、自覚と責任を求められていると感じながら1カ月を過ごしました。
はじめて主治医として患者さんを任されましたが、退院される患者さんを見送った瞬間に、医師としての実力が上がったと感じました。
市川 摩病院でも指導医の先生のもとで治療方針を決めたり、退院の調整をしたりということは任されていましたが、なぜこの治療をするのかという根拠を突き詰めて考えたことはありませんでした。自分ひとりで主治医になったときに、必死に調べた症例と治療法はいまでも記憶に残っていますが、なによりも、根拠にもとづいて治療方針を決めるという、思考のプロセスが鍛えられました。

 

――外部研修のメリットをお聞かせください。
清水 外部研修では、自分ひとりで一から考えて行動するという機会を与えていただきました。例えば採血を依頼するときには、どのような疾患を疑って調べるのかという根拠を自分で考えて説明することが求められます。
池田 「それ、どういう適応で検査を頼んでいるの?」と聞き返されたことがありました。
清水 多摩病院では、自分で考える前に指示を受けることが多いので、自分は受身になっていたことを外に出て強く感じました。
池田 研修の1年目は、指示されたことを間違いなくこなすだけで精一杯でした。基本を身につけるという意味では、それでよかったのだと思いますが、いまから思えば、2年目に入っても受け身の状態が続いていたのですね。外部研修にいくことで、このままではいけないということに気づかされ、医師として成長することができました。
ほかの研修医から、患者さんを引き継いだことがありました。喘息の患者さんで、カルテに書かれたとおりに治療を続けたのですが、1週間ほど経ったころに症状が悪化しました。同じ治療法を続けることに疑問を感じて治療プランを見直すと、症状は快方に向かいました。
多摩病院では、ほかの先生が決めたプランを疑うことなく治療を進めていましたが、治療は患者さんの人生を左右します。主治医は責任をもって、治療の一つひとつを疑ってかからなければならないし、そのためには治療法を決めた根拠までさかのぼって考える必要があります。惰性でこなすのではなく、常に批判的に検証することが必要だということを、外部研修で教えられました。
市川 自分ひとりですべてを判断するという状況に置かれたことで、根拠と診断をセットで考えるという、思考のプロセスがかたまったのだと思います。研修1年目のころは、治療の効果が表れないときには上位の先生が修正案を考えてくださいました。かならず根拠を説明してくださるので、知識は増えるのですが、ひとりで診断を下すというアウトプットの機会はありませんでした。
池田さんのケースでは、アウトプットを求められたことで、思考のプロセスを意識することができたのですね。私自身も、自分が立てた治療プランの間違いに気づくことができて、成長を実感しました。内部研修に戻ってきてからは、以前よりも高い意識をもって研修に臨んでいます。
――外部研修の経験を踏まえて、多摩病院のアピールポイントをお聞かせください
池田 初期臨床研修の2年間を通じて多摩病院で学んだことは、ほかの病院でも十分に通用することがわかりました。先生方の手厚い指導のもとで医師としての実力を身につけることができるのが、多摩病院の初期研修です。
市川 多摩病院は、総合診療内科をベースとして、幅広い症例に対応できる、ジェネラリストの育成に取り組んでいます。どの医療機関でも通用する実力は、ジェネラリストとしての基礎力がもとになっています。
清水 「市民がいつでも、安心し満足できる、愛ある医療を提供します」という理念のとおりに、患者さん本位の医療を実践しています。医療的なエビデンスにもとづいているので正しいという理由で治療を勧めるのではなく、患者さんとご家族の意見を尊重しながら、本当に求めている治療を提供します。このような、病院全体が持つ文化や雰囲気が、研修医への熱心な指導につながっています。